何年か前から業務委託やフリーランス契約、シェアサロンというものを美容業界で聞くようになりましたが、今では当たり前の働き方の選択肢として考えられています。
人によって見解は様々ですが、今後はインボイスの影響などで業務委託やフリーランスは減少するといった声もあります。
私個人として国からのテコ入れがない限りまだまだ増加の傾向にあり、インボイス導入後も増加していくと思っています。
そういった働き方の多様化が進んでいく美容室ですが、今回の記事は通常の雇用系サロンとしてどう対策していくのか?
普段ご相談をいただいた時にお話させていただく事をまとめて行きたいと思います。
美容業界の悩み
今後も業務委託やフリーランス契約の美容師が増えていけば、それに伴い業務委託サロンも増えていきますよね。
そんな中、普通に雇用でのサロンを開業したいと言う方はまだまだ多く、独立する方も事業をされている方も含め、見直しや改善も含め給与の相談も多く頂いております。
- スタッフが入ったはいいけどすぐに辞めてしまった
- 求人の応募がない
開業してからのオーナーの悩みの1つとして、人材の問題は早かれ遅かれ増えてくる問題だと思います。
美容師ブームの時代には某ドラマの影響などもあって、サロンに張り紙をしたり、放っておいても求職者側から問い合わせがあった時代がありました。
求人媒体に掲載すれば必ずと言っていいほど反応があり、採用できた時代もありました。
現在は業務委託のサロンが活気づいていて、通常の雇用サロンに比べ増加傾向にある委託サロンは歩合も高く、中堅どころのスタイリストは通常の雇用サロンと委託サロンを選択できる時代になり、もっと稼ぎたいと思っているスタイリストは委託サロンを選ぶ方も増えています。
なぜ業務委託やフリーランス契約の美容師が増えたのか?
なぜ委託やフリーランス契約が増えたのでしょうか?
いくつか原因があるかもしれませんが、特に関わってくるのは美容業界の社会保険問題です。
法人であれば社保加入義務があります。
ほとんどの法人美容室であれば加入されていると思いますが、加入出来ていないサロンもまだあるのではないでしょうか?
法人であれば社保は『義務』です!
社会保険が決して悪でも正義でもなく、法人ではしつこいようですが”義務”なんですよね。
社会保険料の負担額は労使折半で、この業界では割と雇用側の会社負担に目が行きやすいですが、同額を従業員がそれぞれ負担しています。(美容国保は健康保険部分は会社負担はなく年金部分のみ会社負担になります。)
なので法人会社に雇用されているスタッフは、給料から天引きされた金額が手取りになるんですよね。
しかし個人事業では社会保険の義務はなく(雇用労災は加入義務があります)美容業界においては、個人事業サロンで働くアシスタントさんは特に、ぶっちゃけ国民年金も払っていない方も多かったりします。
国民年金も義務なので、本来は払っていないといけないのですが、個人サロンで働いていて払っている方でも、支給された給与から自分で健康保険や年金を支払うのですが、法人サロンになると給与から天引きされるので、手取り額は結構な差額が生じてきます。
そして駄目なんですが、年金を払っていないスタッフからすれば、数万単位で使えるお金が減ってしまうんですよね。
総支給額と手取り額
例えば売上70万、25万の給与のスタイリストが居るとして、社保がなければ多少の天引き(源泉徴収や雇用保険料等)はあるにせよ、総支給額と手取り額はそんなに差はないでしょう。
そこに社会保険が加わってくると、給与額の15%が個人負担になるので、手取りは21万くらいになってきます。
その差3〜4万くらいでしょうか?
もともと法人で、入社時から社保完備であればそれに慣れてくるので、もしかしたらそれほど支障はないかも知れませんが、途中から社保を始めた場合は、がくっと手取りが下がるんです。
そんな状況の時に、隣の業務委託サロンでは歩合が50%の求人をしている。
確定申告をしなければいけなかったり、開業届を出さなければいけなかったり、手間はかかるにせよ
『同じ売上で35万の所得が得られる。』
ここだけ切り取るとかなり魅力的に見えてしまいますよね。
委託をしてみて、雇用に戻る方もいらっしゃるとは思うのですが、委託者や委託サロンが増加している現状を考えると、魅力を感じている方も少なくないんでしょうね。
その方達が、個人事業主としてしっかり申告などをしているかは別として、ですがw
業界全体が目指そうとしている方向性と、従業員が求めている働き方や求めることは、必ずしも一致しないのが現状なんじゃないでしょうか?
更に細かく分類すると、新卒者、アシスタント、ジュニアスタイリスト、スタイリストをそれぞれ考えた時に、求めることはそれぞれ変わってくると思っています。
給料が○○万もらえていたら、独立してましたか?
この質問は、開業打ち合わせの給与相談の時によくさせてもらってます。
業務委託も含め、折角育ったスタイリストが独立を含め辞めていってしまう事に対して、今後はオーナーとして対策しなければいけません。
自分がいくら貰っていたら辞めていないのか?
どういった雇用条件ならそのサロンに残っていたのか?
その部分を現実に実行できるかも含めてしっかり考えていかなければいけません。
この質問をさせていただき、ある程度の金額を提示すると、それくらいだったら迷っていたかもなーという金額があったりします。
それを1つの基準にすると、離職は防げるかもしれません。
要は離職や独立を考えても、サロンに残ったほうがメリットを感じる仕組みが必要なんですよね。
やりがいや福利厚生はもちろん必須です!
いくら給料が高くても、やりがいも感じられないサロンワークは、仕事ではなく作業になってしまう可能性もあります。
ただ、いくらやりがいがあり、成長できるサロンでも、先立つものがなければ仕事を続けていくのは厳しくなってしまうのでしょうか?
自分が目指す上司や先輩の給与を知った時に、それだけやればしっかり稼げるようになるんだ!
と思える給与体系か?あれだけ仕事ができてもそれしかもらえないんだ、、、と思われてしまう給与体系か?
サロンを選ぶ理由は福利厚生や条件だけではないとは思っていますが、もらえるに越したことは正直無いんじゃないかと個人的には思ってもいます。
独立に対しての想いや目的はそれぞれあると思いますし、給与が高いからって独立や辞める理由にはならないかも知れませんが、離職や独立をするメリット・デメリット、その会社に残るメリット・デメリットを天秤にかけたとき、もしかしたら残っていたかも?という給与の体系や福利厚生などの仕組みづくりをしていかないといけませんよね。
やりたいお店づくりと働きたいお店づくりのギャップ
これは多々サロンが抱えている問題でもありますが、離職の一番の原因とも言えるオーナーとスタッフの考え方のギャップが多く発生しているように感じます。
あるサロンオーナーは、従業員の福利厚生の為に社会保険を導入しました。
もちろん一番の加入理由は従業員の為を思ってです。
ところが社会保険の仕組みや手取り額の説明も事前にして導入したにも関わらず、スタッフが立て続けに退社していってしまったんですよね。
もちろん全てのサロンが当てはまる事ではなくて、自分はそうはならないと思う方も多いでしょう。
そうなることが予測できるなら、そもそも社保もやらなかったでしょうし。
でもこうなってしまった事実があるのも現状ですし、こういった話は決して少なくないんです。
結果として、全ての従業員が社会保険を望んでいなかったのか、思ったより手取りが減って(説明はしてました)生活が苦しくなったのか理由は明確ではありませんが、事実として社保加入がきっかけで離職者が増えてしまったんですよね。
スタッフがわがままなのかもしれませんが、そうもいってられないのが美容室の経営です。
オーナーは社会保険加入によって、従業員満足度を上げたかったにも関わらず、結果としてスタッフが辞めていってしまったということは、そこに少なからずギャップが発生していた事になります。
その事実を受け入れなければいけないですよね。
美容室の給与体系(雇用体系)
さて、ここからが本題です。
サロンからの離職を防ぐにはどうしたらいいか?
スタッフのニーズに合わせて仕組みを作っていくのは賛否両論あるかと思いますが、大きく分けて2つの方法を書いていきます。
色々なサロンさんで打ち合わせをしていく中で、ある程度理に叶っていて、納得していただき導入していただいている方法にはなるので、参考にはなるかと思っています。
雇用と委託(面貸し)の両立
まず1つ目がこれ、雇用と委託の両立です。
アシスタントや売上の低いスタイリストは、安定した給料や福利厚生を望む方が多いので、雇用して給与を支払う。
これは社保をやるやらないはどちらでも変わらず、しっかり加入していても比較的所得の少ないスタッフ達なので、そこまで金銭面でのダメージは無いはずです。
売上がある程度上がってきた段階で、そのまま雇用でいるか業務委託に切り替える選択ができる。
こんな仕組みはどうでしょう?
ある程度売上が上がってきたスタイリストが委託サロンに流れてしまうのであれば、自社で抱え込めるような仕組みを作ってしまうんです。
例えば数字は適当に当て込んでしまいますが、100万の売上を持っているスタッフが、雇用で35万の給与だとします。
本人の希望があれば業務委託に切り替える事ができ、歩合率は50%すると、そのスタッフは50万の所得を得られることになります。
スタッフ側にメリットが大きく見えてしまいますが、雇用の場合で社保会社負担分まで考えると、実質そのスタッフの給料と合計すると約40万の会社負担額なんですよね。
プラス10万の費用で、売上100万のプレイヤーを自社で抱え込む事ができるのは、会社やサロン側からしてもかなりのメリットになるのではないでしょうか?
更にサロンで元々雇用していたスタッフなので、業務委託者と雇用スタッフの人間関係や、サロンの雰囲気を壊してしまうような事態も、かなりの確率で防げるんじゃないかと思っています。
細かい仕組みに関しては決め事や業務委託契約書も必要になってきますが、委託サロンに少なからず魅力を感じてしまっているスタッフの足止めの方法の1つにはなるかと思っています。
売上を持っていて辞めてほしくないスタッフには、しっかり稼げる環境をサロンが提供出来ることは、サロンで長く働いて貰う手段として有りなのではないかと思います。
給与体系の細分化
休日が多く欲しいのか?休みは少なくても稼げるのか?
どういった方向性で考えていますか?
ここでの案は、その両立です。
給与体系を作成する上で、最低賃金をしっかり抑え、労働基準法に反していなければ、基本的にはどういった仕組みにするかは自由です。
だったらどっちの給料にするか、スタッフが選べるというのはどうでしょう?
例えば同じ新卒のスタッフが2人いたとします。
1人は月給20万、隔週2日休み。
もう1人は月給18万、週休完全2日。みたいな感じです。
これを1年毎にどちらを選択するか見直してもいいですよね。
デメリットとしては、サロン側として仕組みを維持するための給与計算などの手間が単純に増えてしまうこと、細分化しすぎてしまうとそれこそサロンコンセプトを見失ってしまったりするかもしれません。
メリットとしては、求人難のこの時代なので、できるだけ間口を広げる事ができ、なおかつスタッフとの給料や福利厚生のギャップが生まれた時に、サロン内で解決出来る可能性が増えるといった所でしょうか。
社会保険の仕組みをしっかりと理解し、スタッフに伝えていく事も重要です。
その上で選択がそのサロン内でできるのであれば、スタッフにとっても、サロンにとってもメリットが大きくなってくるはずです。
話は少し変わって、サロンオーナーとお話させていただいていると、あるスタッフだけは特別な手当てや給与体系になっていると言う話がちらほら出てくるんです。
そのスタッフに辞めてほしくなかったり、特別な感情があったりなど、理由があっての事だったりするんです。
実は、このやり方、サロン経営の中でやってはいけない事のかなり上位にランクインします。
オーナーの知らないところでスタッフ同士、仲が良いのであれば良いほど、給与の話などもしていますよね。
そんな中でスタイリストの給与を聞いていたアシスタントが、スタイリストになり売上を上げるようになった時に、明らかに額面が違う。
稼げるイメージがあったのに、実際は違っていて、更に待遇も個々で違ったという事実を知ったとき、高い確率で離職に繋がってしまうでしょう。
そうはならないよう、理想としては誰がいくら稼いでいるか、どういった給与体系で計算されているか?
そこができるだけ明確になっていると、自分がどうすれば稼げるようになるのかが解りやすいので、モチベーションにも繋がると思っています。
以前のサロン経営から、より複雑になってきている美容室経営ですが、方向性や目的が明確であれば、新たな考えも生まれ、再構築も出来るでしょうし、悩みを早期解決出来ると思っています。
美容室の求人
余談ですが、最近の求人事情としては、応募が少ない、こないといった悩みはもちろんですが、入社したはいいけどすぐに退社してしまったという、早期離職問題を抱えているオーナーも増えてきています。
これも1つのギャップで、入社してみたはいいけどなんか合わない。
聞いていた労働条件と違う。などの理由から早期退職に繋がっているようです。
美容師の数を増やすことは壮大なスケールの話になってしまうので長期的に業界全体で考えていかなければいけませんが、離職率を減らす。
早期退職を予防するというスタイルで、動画を採用した求人サイトがあります。
時代は画像から動画に流れていて、WEB上で擬似サロン見学をすることによって、面接ドタキャン率、早期離職率を下げる事が出来ると実感しています。
時代の流れで求人サイトも進化すると思っていますので、大手求人サイトに不満を感じていたり、これからの美容師求人を検討されるのであれば、下記サイトも一度ご覧いただければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
美容室経営者と働くスタッフ、同じ目線でいることは難しいですが
美容室経営者も元は美容室のいちスタッフだったはずです。
時代共に変化した部分もあるかと思いますが、自分が働いていた時はどう思っていたか一度振り返ってみるのも良いかもしれません。
こちらの記事では、スタッフが早期退職してしまう理由についてまとめています。
是非参考になさってください。