今回の記事では、開業を考えたときに必ず必要になってくる事業計画(創業計画)について書いて行こうと思います。
一体どうやって考えいていけばいいの?
実際の所、開業にいくらかかるの?創業融資はいくら借りればいいの?
など、色々な準備をしていく中で、最も頭を悩ます部分ではないでしょうか?
事業計画を大きなくくりで2つに分けると
- 創業する上での自己紹介と自己アピール作文
- 開業時に考えられる数字の試算
この2つに分けられるかなと思います。
ここに記載している情報は、サロン開業融資を受ける際に必ず必要になるでしょう。
銀行や信金、日本金融政策公庫などのあらゆる金融機関の融資審査で必須書類となります。
前もってまとめておいても絶対に無駄にはならないので、早い段階で手を付けておく必要がある書類になります。
この事業計画書の作成について少しでも参考にできるよう書いていこうと思います。
事業計画(創業計画)の書き方
まずは創業動機、経営者の略歴、取扱商品やサービスについて書いていきます。
ここに関しては正解はあってないようなものなので、書き方というより考え方を書いていきます。
なぜ正解が無いか?
それぞれ経歴も違えばやりたいことも違い、創りたいサロンの形は様々なので、どう書けば正解というものがないんです。
実際に書類を確認させていただく事も多々ありますが、基本的には誤字脱字がないかチェックするくらいなのでw
何をどんな感じで書けばいいか?
はお伝えすることはできるんですが、詳細は人それぞれ変わってくるはずです。
- 要はなぜ起業をする流れになったのか?
- 自分の売りは何なのか、技術なのか接客なのか?
- ターゲットの客層は?
- 今までの美容経歴は?
そのすべてが審査の対象になり、この人は借金を返してくれそうな人なのか?
その情報源になりますので、しっかり自分をアピールしましょう!
創業の動機
「何を書けばいいんですかね?」
と質問をよく受けますが、好きに書いて下さいwとお伝えしています。
頭のなかにある独立に至るまでの経緯や、想いがあると思うので、それを文章化すればOKです!
それが難しいと言う方も多いのですが、これはこちらがとやかく言うことではないので、思いのままを文章にして頂ければと思います。
その場所を選んだ理由を例にしてみましょう!
- 前の職場から近く、お客様をそのまま引き継ぐことができるから?
- 地元に帰り出店するのが昔からの夢だったのか?
- マーケティングを重ね様々な理由からその場所を選んだのか?
- なぜこのタイミングだったのか?
- 何歳までに独立するかを決めていたのか?
- 自己資金が溜まったタイミングなのか?
それ以外の理由もたくさんありますよね。
美容師になった頃からの夢、っていうのも動機の1つですし。
そう言った事情を、1つの文章にまとめていけばいいんです。
ちなみに文章ではなく、箇条書きでも特に問題はないので、文章にまとめきれない方は箇条書きも有りです◎
公庫の正式書類の記入欄には4行しか無いのですが、ここに書ききれてしまうくらいの想いしかないの?
って事です。
もちろんダメではないですが、どんな想いで独立するかはここには書ききれないですよね?
面接官によりアピールしたいですよね?
その場合は計画書に「別紙参照」と書いて、別の紙に思いを綴ってください
経営者の略歴等
ここには、美容師になってからの経歴を残さず、隠さず書いて下さい。
通常の履歴書だと、転職が多いとイメージが悪くなるかも知れませんが、ここでは関係ありません。
「色々な美容室を独立のために経験してきた。」
これ通じる話ですよね?
そして美容師を何年やってきたか?
これの方が重要で、美容歴=自己資金として見てもらえたりもしますので、美容学校を卒業してから勤めた経歴は残さず書きましょう!
美容歴が長ければ長いほど、役職経験や受賞履歴があればあるほど、自己資金と同等な経験値と判断して貰えるところなので、意外と大切な項目なんです!
ポイント
ここでのポイントは『美容師としての略歴を面接官に伝え好印象を得ること』です。
コンテストで入賞した経歴や、ショーにヘアメイクで参加、サロン内でのコンテスト入賞を書いてもいいですし、店長経験やマネージャー経験を書いてもOKです。
些細な事でも自分をアピールできることは書いておいた方がいいです!
取扱商品・サービス
創業計画書上の取扱サービスとは、いわゆるメニューのことです。
公庫の書類でいうと6行しかありません。
- カット
- グレイカラー
- ファッションカラー
- パーマ
- デジパー
- トリートメント
- 炭酸
- セットメニュー
これだけでも8種類のメニューあります。
そこにロング料金や子供カット、メンバー価格などが入ってきますので、これも用紙には書ききれないですよね?
なので、メニューも別の用紙を用意することになるかと思います。
メニューを無駄に細かくする必要も無いですが、融資面接の段階である程度メニューも考えておかないと
「この人大丈夫かな?」と悪い印象を与えてしまうかもしれません。
いかに融資面接官に安心感を与え、自己アピールができるかが重要ですからね!
セールスポイント
これは他のサロンとの違い、いわゆるサロンの売りはなんですか?って事です。
例えば、
- バリアフリーで車椅子のお客様も対応します。
- オーガニックの商品を揃えてナチュラル志向のサロン
- シャンプーの種類を数多く揃えてソムリエ的なサービスをする
など、こちらも正解はありませんが、他のサロンと同じことをしていては、これだけ美容室が乱立している中で生き残って行けないかもしれません。
言うまでもないですがやりたいこと、やろうとしている事を、サロンのセールスポイントをしっかりアピールしましょう!
取引先・取引関係等
こちらに関しては、決まっていなければ書いていなくても書類が通るケースもありますが、美容室の場合は基本的に、販売先は一般顧客ですよね。
そして仕入先は取引ディーラーになるかと思いますので、同じく融資の書類に必須の美容器具見積書を依頼したディーラーを記入しておけば問題は無いかと思います。
ここはこれ以上、書くことがないですねw
ここまでが事業計画上の自己紹介とアピール作文になります。
どちらかというと頭の中を整理すれば自然に出来上がってくるものだと思いますので、先に伝えた通り正解が無いんです。
なので、ゆっくりまとめておいていただければと思います。
さて、ここからは創業計画書の数字部分です。
こちらが苦手であったり
「いったい創業にいくらかかるの?」
よく質問を受ける部分になります。
数字が関わってくる部分を大きく分けると、
- 必要な資金(開業資金、予算)
- 事業の見通し(開業後の経営試算、推移表)
この2つですかね。
それぞれを解説していきたいと思います。
必要な資金と調達方法
自己資金が○○円あって、創業に〇〇円必要なので、〇〇円融資して欲しい。
数字例を入れると、自己資金が300万あって、創業に1300万必要なので、1000万融資して欲しい。
という事の詳細を作っていくという事です。
資金の枠は大きく分けると
- 設備資金
- 運転資金
この2つに分けられます。
設備資金は内装や美容器具等、融資の際に見積書を提出する必要があるものを指します
(物件の保証金、敷金などもこちらに含まれます)
一方、運転資金は保証金(敷金)以外の不動産取得費、家電、家具、ホームページ、求人、集客、家賃や人件費の運転資金などを指します。
融資の枠も実はこの2つに別れていて、細かい話をすると設備枠の方が美容室の開業資金調達には向いている(勝手が良い)のですが、それについてはまた別の機会に書いていこうと思います。
1つ例を上げてみます。
- 自己資金・・・・・300万
- 親からの借入・・・100万
- 物件サイズ・・・・15坪(家賃15万・セット面4席・シャンプー台2席と仮定)
- 不動産取得費・・・150万(前家賃1ヶ月・保証金6ヶ月・礼金1ヶ月・保証会社1ヶ月・仲介手数料1ヶ月の計10ヶ月分と仮定)
- 公庫借入・・・・・10000万希望
と仮定すると。
まず開業総予算は自己資金300万+親借入100万+公庫融資10000万=1400万ですよね。
なので、1400万の事業計画を作成して行きます。
そもそも1400万で開業できるのか?というのも気になりますよね。
『不動産取得費』
まず、物件が定まった段階でほぼ確定するのは不動産取得費。
その物件で出店するのであればこの金額は多少の増減はあってもほぼ変わりませんので、150万は確定です。
『運転資金』
他に確定しておきたいのは運転資金。
開業時にいくらの運転資金を取っておけば安心でき、かつ攻めの経営ができるか?
最低でもとっておきたいラインとして、家賃・人件費・返済費用の3ヶ月分。
家賃が15万なので15✕3=45万
スタッフを1人月給20万で雇うと仮定して20✕3=60万
返済は1000万の融資を10年で返済するとなると月々83333円なので、83333✕3=249999円(約25万)になります。
合計すると45万+60万+25万=130万になり、これが最低とっておきたい運転資金額になります。
出店エリアや状況により、金額は上下しますがここではこの金額130万と仮定します。
実際の運転資金はこの倍くらいは確保しておきたいところです。
『ホームページや材料など』
あとは大まかな分類分けをすると、内装・器具・材料・家電・家具・印刷・ホームページ・その他雑費といったところですかね。
この中の家電・家具・印刷・ホームページ・印刷・その他雑費に関しては、ある程度目安の金額は出せますが、実際にいくら掛かるかはこの段階での確定は難しいので、1つの括りで予算取りとして150万とします。
『美容器具』
次は美容器具です。
こちらはレイアウトが決まってくる段階で必要な数や機材をある程度は決めておかないといけません。
バックシャンプーで平面図を書いていたのに、ユメを入れたくなったらレイアウトも変更しなきゃいけませんし、予算どりも変わってきますからね!
ここではセット椅子×4(1台5万)=20万
シャンプー台×2(1台40万)=80万
デジパー×1=20万
ミスト×1=40万
ボイラー×1=80万
とすると、器具合計が240万になります。
『総予算の試算』
ここまでを合計すると
不動産取得費・・・150万
運転資金・・・・・130万
材料など雑費・・・150万
美容器具・・・・・240万
合計・・・・・・・670万になります。
予算の1400万から670万を引くと830万。
830万がMAX内装費用になります。
1400万という予算内で開業できそうですね!
運転資金をプラス100万確保するのであれば内装費は上限730万になりますし、上記の項目に金額を当てはめて考えてみると、どれくらいの開業予算が必要なのかが試算できると思います。
仮に1200万の総予算で、上記の予算で考えて行くと、内装費用は630万になりますよね。
運転資金をプラス100万確保すると530万の内装費。
こうなってくると物件にもよりますが、作りたい内装ができなくなってくる可能性もあるので、美容器具などをリースにして現金を確保し、内装費や運転資金に回すなどの動きになるかもしれませんね。
私の考え方では、内装費を最後に考えるのがポイントです。
それぞれの予算どりをした上で、どれくらいの内装費用をかける事ができるのか?
そうすると、足りる足りないが分かりやすいかなと思っています。
事業の見通し
最後に事業の見通しです。
言うなれば事業計画の経営試算です。
ざっくり言うと、いくらの売上があって、どれくらいの経費を使って、いくらの利益が出るから儲かります!
なのでしっかり返済できます!
と、アピールしなければいけませんよね!
なので、用意された用紙に記入するレベルの計画だと、融資の面接までたどり着けないかもしれませんw
現在の売上、客数、客単価を元に、どれくらいの売上見込みがあるのか?
損益分岐月々の経費を試算して、利益がでる最低必要な売上)を予測し、損益分岐点に満たない売上しか見込みがないようであれば、そこを埋めるために集客費用をかけたり。
あ、しっかり前のオーナーとお話しして、円満退社を心掛けて下さいね!笑
材料費、家賃、人件費、水道光熱費、広告費、リースなどの支払い、お客様にサービスするコーヒーや雑誌も全て経費です。
お店を維持する為に最低限必要な経費額が、損益分岐の売上になるわけです。
仮に損益分岐が70万だとすると、70万の売上がなければ赤字、それ以上の売上が上がればオーナーの所得になるわけです。
あくまで予測の段階ですが、ここで赤字になるようではお金貸してもらえないですよねw
自分の売上と照らし合わせて、今より収入が少なくなるようであれば、独立自体を考え直した方がいいかもしれません・・・。
逆を言えば経費を抑えて、売上を上げていけば、今よりあっという間に所得が上回る可能性もあるという事です。
ちなみに返済は借りたお金を返しているだけなので、経費にはなりません。利息は経費ですが、120万の売上見込みがあって、70万の経費の場合、50万の利益になり、そこから返済をしても41万くらいは残ります。
それを2021年度の月毎の予測、年間予測を立て、前年度からの売上比率を考え、2022年・2023年と、最低でも5年分くらいの予測は立てたいところです。
これに関しては実際の数字を当てはめての試算が難しすぎるので、必要であればお問い合わせください!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
創業計画書は基本的には自己アピールとこれからの未来予測です。
実現不可能な予測や、実際の経歴とは違うウソを書いてしまう方もいらっしゃるみたいですが、開業して困るのは自分自身や家族です。
見込みを甘くみると取り返しのつかないダメージを負う事にもなりかねないので、しっかりと、実現できる計画を立てて行きましょう!
こちらの記事では、さらに詳しい事業計画書の書き方や、盛り込むべき要素などをまとめています。
是非参考になさってください。