美容室での働き方は、年々変化してきています。
以前は雇用という働き方しかなかった業界でしたが、業務委託という働き方が1つの軸になり、ここ数年ではフリーランス(面貸しやシェアサロン等)の働き方も軸になりつつあります。
以前に流行っていて一時廃れていたFC(フランチャイズ)も近年では仕組みが見直されて、最近では多く取り入れられるようになってきました。
でも実は、新たな仕組みというわけでもなく、昔からあった物が今見直されて、幅広い働き方がより身近になったんですよね。
フリーランスという働き方も、近年増えてきていますが、以前からあったものなんです。
少しずつ変化し、精査され今に至っているんですよね。
雇用サロンで業務委託を取り入れたり、面貸しを取り入れたり、逆に面貸しサロンが雇用者を増やしたり、その垣根はなくなりつつありますが、そもそもの違いを知っておく必要があります。
ここでは、業務委託と面貸しの違いをお伝えし、今後サロンで取り入れる際の参考に、また今更聞きづらいと思っている美容師さんの情報源になればと思っています。
最近ではその垣根も曖昧になってきていますので、一般的な基礎知識として捉えていただけると幸いです。
美容室の業務委託とは
美容室の業務委託とは、サロンが集客したお客様を、美容師(業務委託者)に担当してもらい、施術を行ってもう事です。
集客はサロン、売上管理もサロンが行います。
サロンが集客し、美容師に委託をしてその売上に対しての対価(報酬)を支払うというのが一般的な業務委託の仕組みになります。
多くのサロンが前月の○○日までにシフトを決めて、翌月の出勤日を決めています。
集客サイトなどを活用する場合、予約枠を開けているにも関わらず、委託美容師が不在というわけにも行きませんよね。
雇用に比べれば働き方の自由度は高くなりますが、今日は予約が入っていないから出勤しない。ということは基本的にできず、予約が入っていないから先に帰ってしまうというのも基本的には出来にくい仕組みになっています。
開業届を提出し、確定申告を行う店舗を持たない独立という位置づけになります。
施術で必要な材料などは、サロンが負担することが多く、その分も含めフリーランスよりも報酬額が低く設定されています。
報酬額
雇用に比べると多く稼げるというのも業務委託の魅力になっています。
一般的には売上に対する50%の歩合率というサロンが多いです。
全てのお客様を一律で50%の歩合としているサロンもありますし、新規は40%、既存客は50%、自力集客(インスタや紹介など)は60%と、歩合率を細かく設定しているサロンもあります。
それに加え、消費税も支払われることになる(内税計算のサロンもあり)ので、仮に売上が100万円(税抜)だった場合、50万円前後の報酬と、5万円前後の消費税を受け取ることができるので、ざっくり55万円の報酬になってきます。
雇用の場合、売上に対して平均35%くらいの報酬なので、同じ100万円の売上で35万円前後の給与で、更に社会保険に加入しているのであればその分も天引きされますので、30万円くらいの手取り(美容国保などの特殊なケースは考慮していません)になってきます。
その差は結構大きいですよね、業務委託という働き方が美容業界で主軸の1つになった理由の一つが美容師の所得が増えることでもあります。
美容室のメリットは?
単純に美容師(業務委託者)の報酬が上がってしまうだけでは、サロンにとってはデメリットになってしまいますよね。
ではメリットは何か?
業務委託は社会保険加入義務がないので、増員したい場合に社会保険の負担を考える必要がありません。また、アシスタントから育てたスタッフが他に流出してしまうというリスクもなくなりますので、教育をそこまで充実させなくてもサロンが成り立ちます。
サロンと業務委託者(事業主)との委託契約という関係性になりますので、雇用に比べて諸々のリスクを軽減(残業や有給など)できるという面もメリットになるでしょう。
美容室のデメリットは?
報酬額が上がり、サロンの利益が減少する以外にもデメリットはあります。
雇用に比べて関係性が希薄になってしまうという点。雇用関係ではなく、委託契約という関係性なので、そこまでの人間関係を求めていない美容師、サロンもあるでしょう。
技術レベルの統一が難しいというのもデメリットになり得るでしょう。そのため、多くの業務委託サロンは低単価の価格設定にしているサロンが多く、その代わりに数をこなしていくというスタイルが多いのです。
それに伴い、集客費用が上がりやすいという事もあります。委託者は売上がなければ稼げません。集客が弱い委託サロンでは、長く働いてくれないでしょう。稼ぐ為に委託を選択している美容師が大半なので、集客は業務委託サロンの肝になってきます。最上のプランで集客しているサロンも多くあります。
美容室の業務委託まとめ
雇用に比べて稼ぎやすく、比較的簡単に選択できるのが業務委託でしょう。
社会保険などの保障は必要ない、自分の身は自分で守るから多く稼ぎたい、という美容師のニーズに上手くマッチし、今では業界で当たり前の働き方になりました。
しかし稼げるというメリットだけではなく、後ほど詳しく書いていきますが税務処理をしっかりと行っていかなければいけませんので、自分が独立した、開業したという認識が必要になってきます。
美容室の面貸し(フリーランス)とは
店舗を持たない独立という位置づけは、業務委託とかわりません。
では、何が業務委託と違うのでしょう?
フリーランスは、自分の顧客をサロンのスペースを借りて施術をします。売上の管理はフリーランスの方本人が行い、家賃のような固定費と売上に対するパーセンテージをサロンに支払う。といった流れになります。
集客はフリーランス自身、売上の管理も同じく自身、それに対する支払いをサロンに支払うという形なので、業務委託とは似て非なるものになってきます。
自身の顧客に施術を行うので、基本的には出勤は自由、勤務時間も自分で決められるので業務委託と比べより自由な働き方が可能になるでしょう。
しかし、集客が自己集客になりますので、ある程度のキャリアを積んで、顧客を抱えたスタイリストでなければ思うようには稼げない働き方でもあります。
更に材料は自己負担のサロンが多いので、使いたい商材を選択できるメリットはありますが、その費用は自己負担になってきます。
報酬額
自分で連れてきたお客様が殆どになりますので、稼げる金額もより多くなるのが一般的です。
固定費(使用料・家賃など)+売上に対するパーセンテージというのが一般的で、業務委託よりも設定は様々ですが、売上の70%前後の設定が多いです。
仮に固定費5万円、100万円の売上(税込み110万円の場合)であれば、30%の33万円+固定費5,5万円=38,5万円をサロンに支払うようになり、手元には71,5万円残る計算になります。
サロン側としては、売上の少ないスタイリストにセット面を占領されてしまうとリスクになりますので、固定費は高めに設定し、一定の売上を超えた場合は固定費免除など、その報酬設定(利用金額設定)は幅広くなっています。
ある程度の売上見込がある(顧客を抱えている)のであれば、より自由度の高いフリーランスという働き方の方がより稼げますが、保障(社会保険)がなく、集客も自分で行っていくため、自由に甘んじていると将来に若干の不安があるかもしれません。
美容室のメリットは?
フリーランスを自サロンで、そう考えている経営者の方も最近増えてきています。
空いているセット面があるのであれば、積極的にフリーランス美容師を集めていくのも一つの手段でしょう。
固定費を設定することで家賃の補助などの費用が賄えるため、サロンのスペースを有効活用できます。また、美容師に限らずネイルやアイラッシュなど、スペースを求めている個人事業者は多くいますので、せっかくのスペースを有効利用する方法になるでしょう。
集客においても、業務委託とは違い基本的にはサロンがする必要はありません。
仕組み作りはもちろん必要ですが、費用をかけずに導入できるというのは大きなメリットになるでしょう。材料費の個人負担になりますので、費用という面ではほとんど負担のない事が多いです。
美容室のデメリットは?
雇用に比べればもちろんの事、業務委託と比べても美容室の利益は減少します。
フリーランスの売上によっては入ってくるお金も少なく、セット面を占領されてしまう可能性もありますので注意が必要です。
業務委託と比べても、関係性が希薄になりやすいので、雇用サロンのようなコミュニケーションを築いていくというのは難しいかもしれません、それを求めていない美容師が多いのも事実です。
技術的な指導はもちろん、サロンミーティングなどに参加するということはあまりないので、元々の知り合いというケース以外は、割り切った関係性になることが多いと理解しておきましょう。
価格設定は個人の自由というケースが多いので、一つのサロンの中に、いくつものサロンが混在しているというイメージでしょうか?
美容室の面貸し(フリーランス)まとめ
店舗を構える独立に一番近い形が面貸しです。
売上の管理から集客までを自身で行い、固定費と変動費をサロンに支払っていく。店舗を構えるリスクを軽減する反面、稼ぎに関しては若干減少するといった感じでしょうか。
最近ではシェアサロンなども増えてきていますが、面貸しの進化版というイメージで捉えています。
時間貸しであったり、箱貸しであったり、同じフリーランスでも大きく仕組みが変わってきます。より自分にあった働き方が選択できる時代になっているのではないでしょうか。
その分、美容師側からすると自己管理が必須になってきますので、安易に選択してしまうと稼げなくなってしまうリスクを抱えているとも言えるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
以前に比べて、業務委託と面貸しの線引が曖昧になってきている状況ではありますが、同じではないと認識いただけたら幸いです。
また、業務委託や面貸しといっても、シェアサロンや個室貸しといった形もあり、より細分化され色々な働き方ができる状態になっています。
雇用サロンと同じように、横一列状態だった報酬も、サロンによってまちまちになってきている現状があります。
雇用と大きく違う特徴として契約書を結ぶ必要があり、これを怠ってしまうと後々金銭トラブルや裁判沙汰に発展してしまう事もありますので、これから始めるサロンオーナーは契約書を作成し、これから委託やフリーランスを検討していく美容師は、契約書の有無を確認しその内容をしっかり把握しておくようにしましょう!
こちらの記事では、美容室の内装業者を選ぶポイントをまとめています。
是非参考になさってください。